minto.通信
2017年08月05日

"生きる力"インタビュー

♯3震災が奪い、与えた”一流シェフ”が経た『生きる力』

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岡野シェフの食に対しての「慈しむ」とは?
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「嫌な経験はきちんと風化する」風化という言葉が持つ意味。
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「否定」は、自分自身の許容範囲の狭さを認めること。
生きる力インタビューは、第1回目にインタビューをさせていただいた巻誠一郎選手が設立した「YOUR ACTION KUMAMOTO」とコラボした連載になっています。
様々な著名人の方に、「生きる力」をテーマにインタビューをしています。

第2回目のインタビューは、現在、スポーツ選手の個人メンタルフードの提案や実践、有名人の食に関するレシピ本のレシピ提案、その他にも”食の分野”で幅広く活躍されている岡野延弘シェフ。
前回のインタビューでは、震災をとおして感じたこと、またそれを経たうえでの岡野シェフ自身の変化をお話しいただきました。さらに岡野シェフに、そして料理との向き合い方に多大なる影響を与えた男性の存在についても教えていただきました。(前回の記事⇒こちらをクリック)
ラストとなる今回は、積み重ねてきた経験をふまえて、現在の岡野シェフが感じていること、思うことをお話しいただきます。

岡野シェフが思い描く、食をとおした「生きる」

僕は今、整理整頓したいと思っているんです。飲食って「こうでないとだめ」って型にはめ込んで考えて、決め込んでしまう人がいっぱいいる。僕は食にまつわるものすべてを「慈しんで」いきたいと思っています。その場所、その土地でその作物を、その料理を作っている意味。なぜその食材を作っているかって意味があって、なぜおいしいのかって意味がわかって、それを最大限生かせる方法を考えて。そうしたらおのずと加工方法だって変わってくると思うんです。
小難しく考えない、クリーンな食事があってもいいんじゃないかって思うんです。それは調味料がどうのこうのとかではなくて。ナチュラルに自然なものを自然に食べられる方法から、そこにちょっと手を加えることで、同じ食材なんだけど、次に進化していくもの、もっといえば日本に生まれてよかったって思える食の提案をしていきたいです。
こんなに土壌もよくて、魚もいっぱいとれて、肉もお勧めできて。世界中のどこ探したって半径100メートル以内に世界中の料理を食べられる国なんて存在しません。野菜もとても豊富。そこで生まれて育ったことを幸せに想えるような、そんな飲食を目指していきたいと思っています。

「嫌な経験はきちんと風化する」風化という言葉が持つ意味とは?

僕は本当に辛い経験をしたけれど、今、やっと普通に夜寝られる自分がいます。そういうときに、かならず「記憶が風化する」ということを強く感じます。
簡単に言ったら「時間が解決する」という言葉に集約されてしまいますが。
これはつまり「時間が経ったとき、その辛い経験が必ず別の大事な意味をもつ」ということなんだと思います。

僕は一生のうちで、辛いことは誰しも均等にあるものだと思っています。
そして、そういった経験が必ず糧になっているのだと心の底から感じます。意味のないことは何一つないって。僕自身、今独身ですが、この先もし誰かと結婚することになったら、相手のことをどうしようもないくらい大事に想えると思うんです。この人をなぜ守りたいかっていう理由もちゃんと言えるだろうし。それは過去に大事なものを失ったことがあるからこそできることなんじゃないかと思います。

辛い経験をしたとしても、その経験に意味を探すことがとても大事だと感じます。


否定することは、自分自身のキャパの狭さを認めること。

いじめについて考えてみると、自分自身がいじめられているとき、もちろん辛く悲しい気持ちになって「被害者」の立場で物事をとらえてしまうと思います。
ただ、そこで考えを止めずに、先ほどの言葉の意味をふまえて、もう一歩先を見てみてほしい。いじめている人に対して「なぜこの人は自分をいじめるのか」と考える時間をもってほしいのです。自分自身の考えをすこし変えて、広げてみると、自ずとその人の弱さが見えてきたりすると思うんです。
いじめている側って、実はすごく淋しい思いをしながら育ったとか、家庭環境に複雑な事情があったとか、よく聞きますよね。そんなふうに相手の立場を理解することで、鎮めることができる自分の気持ちがある気がします。相手のことがわかればわかるほど自分が怒らなくなっていく。相手を認めるという言葉でもそうだし、言葉は違うかもしれないけれど、相手を慈しむということですよね。相手には捌け口がなくて、それがたまたま僕だったんだな、そういうことでしか表現できなかったんだなって。

相手を否定することはとても簡単です。でも、否定をするということは、キャパシティ、つまり許容範囲が狭いということになると僕は考えています。
要は自分の容認できる範囲を超えたときに、自分が納得できないから否定をしてしまうし、否定で終わってしまう。
もし、どうしても否定をしてしまう場合、そのときは、次の展開を考えてあげることが相手を認めることにつながっていくと思います。「よくない」ではなく、「こうしたらいいんじゃない?」と伝えてあげること。この考えは、相手にとっていかによくなるかを考えることと同じ意味を持つのです。そう考えていくことで、もっと人に優しくなれるのではないでしょうか。




最後に

いかがでしたか。震災により大事な存在を失った岡野シェフ。何年もその苦しみと闘いながら、今岡野シェフが感じるものは、周りの人を慈しむ気持ちの尊さ。その気持ちが自分自身を変化させ、人に対して寛容に、さらにあたたかい気持ちを持てるようになっていったのではないでしょうか。
辛い経験が岡野シェフのこころに大きな変化と実りをもたらしたことを、お話を伺いながら強く感じることができました。

●常に相手のことを考え「慈しむ」という気持ちをもつ
●誰かを否定することは、自分のキャパシティの狭さを認めること。否定する前に、提案してみる
●年齢問わず、だれかに120%の力を出して自分自身のことを話してみる 

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